FORELSKET

君の名を叫びたい、星屑ロマンス。

殺風景が私に残したもの

※10/9追記

 

テレビから銃声が聞こえた瞬間、あの時の記憶がぶわっと蘇った。

 

本当に微かな火薬というか焦げ臭い匂いと煙草の匂い、客席までもを飲み込む張りつめた空気。

一瞬にして舞台「殺風景」の世界が私を、再び 包んだのだ。

その時に初めて、「殺風景」が私に残したものの大きさを感じた。

今でも、キーボードをタイプする指が何となく震えている気がする。

 

大好きな八乙女光くんの初主演舞台。それも外部、所謂ストレートプレイで。ずっとこの時を待ち望んでいた私は嬉しくてたまらなかった。光くんが、光くんの好きな仕事で、どんどん私達・好くなくとも私の夢を叶えてくれるこの瞬間がとても好きだ。

 

なぜ1年以上経った今更、「殺風景」について書こうと思ったのか。

それはこれだけ時間がたった今でも、ふと「殺風景」のことを思い出すからだ。

観た人ならばわかると思うが決して後味のいい舞台ではなかった。

殺し、殺され、自害し、笑って、狂っていた。

見ているだけでも体力が消耗される。終演後、何度も疲労感に襲われた。高揚してとか、そんなポジティブなものではなく確実にネガティブな感覚だった。

 

光くんはこの舞台で現代の稔、稔の父の青年時代の二役を演じる。

だけど、何故だか私の記憶の中には強烈に稔の記憶ばかりが焼き付いている。

 

舞台冒頭から殺しが始まる。それも自分の友達を。

光くんの演じる稔は草むらに向かって排泄してる友達に向かって銃口を向ける。

一発目、外れて脚に当たる。父にちゃんと狙えとどやされる。

二発目、命中するが即死に至らず。

その後は叫びながら何発か続けて打つ。

舞台上の銃は、始めの二発ほどは空気砲なのかな?会場中の空気を震わせ、少しトラウマになりそうなもので。だけどその後の銃声は劇場のスピーカーからだった気がする。1年以上も前の記憶だと、やはり細かいことを思い出すのは難しい。

 

舞台は緊迫感に包まれたシーンもあるが、所々に笑えるような場面もある。

・友達親子が稔の家に乗り込むシーン

・家族で食事をするシーン

・殺しをする前に家族で缶蹴りをするシーン

・姉のやっているスナックでのシーン

・過去の炭坑仲間と財布を取り合うシーン

・友達の死体をスーツケースに入れるシーン

・稔の母と友達の母が歌うシーン

ざっと思い出せるのはこれくらいだけれども、まるでさっきまでの張りつめた空気がぷすと抜けていくような感覚だった。

だが、笑いのシーンだと思った瞬間、再びまた心臓が痛くなるような。そんな空気に戻る。

殺しをして、笑って。登場人物が狂気に満ちているように感じていたが、それに巻き込まれていた客席もまた狂っているように感じた。会場全体がカオスと化していた。

監督である赤堀雅秋さんは、舞台上だけでなく客席も含め会場全体を狂気じみたこの世界観に引きづり込みたかったのかもしれないと思った瞬間サッと血の気が引いた。

 

稔が殺しの前、車の中で姉に電話をするシーンがある。

始めはまったくどんなシーンだったのか私の解釈が追いつかなかったが。

稔は電話口でショッピングモールに行ったときの話をする。何の脈絡もなく、とにかく聞いてくれと。

あの時の稔は、本当は姉に止めて欲しかったのではないか?これからそんなことをするなんて、一言も言っていなかったけれども。これから、自分も死ぬのを自ら悟り、最後の最後に、ずいぶんと前に姉に縁を切った姉に甘えたかったのではなかったのか。

私にはそんな風に聞こえて。それがわかった瞬間、涙がボロボロとこぼれて止まらなかった。その瞬間だけ、光くんの演じるがほんの少し愛おしく、可哀想に思えた。

《追記》

当時リアルタイムでやってたブログに殺風景のことが書かれていました

 

稔とミチコは、ほぼ行き分かれの姉弟みたいなもので

兄の直也とは血が繋がっていなくて、直也は稔のことをあまり

好きではない恐らくすごく仲がいいわけではなかったと思うんです。

 親はヤクザで「お前が後を継ぐんだぞ」と言われてきたばかりに

甘えることもできず、殺人を犯す直前にせめてものもがきというのか

最後の最後にお姉ちゃんに甘えたかったのかなと

 

舞台後半、冒頭のシーンに戻るのだが姉の電話のあとシーン。

私には稔の叫び声が助けを求めているかのようで、思わず耳を塞ぎたくなった。

耳が痛い。まさしくも、その表現が的確だった。

《追記》

後は、殺人を犯すとき稔は自分から進んで殺そうとするんですよね。

 

それが忠実に表れてるシーンが母のマリが殺そうとためらうときに稔が

「母ちゃん、俺がやっちゃろか?」って声をかけるところなんですけど。(セリフはニュアンスです)

 

稔は、父の国男にも直也にも「お前がやれよ」と言われても少し拒否?反抗?するんですよ。

「なんで」って。「俺ばっかじゃなくてお前がやれよ」って。

でも、母親のときだけ「俺がやってやろうか?」っていうんですよね。

 

稔は確かに、乱暴だし気性だって荒いんですけどそのシーンに稔のすべての優しさが表れていて個人的にウルウルポイントでもあります。

 

でも、殺したあとに苦しそうな顔をするんですよね…なのに「俺がやろうか?」とも言うし、自分から進んで殺そうともする。そこが未だに謎でたまりません。

 

劇中のセリフに、現代の国男がひかるくん演じる過去の国男に犯行中に国男が稔に「お前は俺たい。俺はお前たい。」っていうのがあるんですど、それも少しは関係あるのかな~って。

 

 

私が殺風景で見た光くんは、残酷で、醜くて、怖くて、臆病で、なのに何処か強がりで孤独で。ほんの少し愛おしくて、なんて思う私も大概「殺風景」に飲み込まれ狂った人の一人なのかもしれない。

舞台上の光くんは大嫌いで大好きな光くんだった。